
【美容室経営マーケティング】集客と求人で差をつける戦略的マーケティング手法

「なぜ隣の美容室は常に満席なのに、うちは空席が目立つのだろう…」
そんな悩みを抱える美容室オーナーは少なくありません。実は、繁盛店と苦戦店の違いは、技術力だけではありません。成功する美容室は、明確な戦略を持って「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」を設計しているのです。
その戦略設計の核となるのが今回解説する「STPP分析」です。マーケティング業界では常識とされるこの手法を美容業界に応用することで、集客と求人の両面で圧倒的な成果を上げることができます。
- STPP分析とは?美容室経営に革命をもたらすマーケティング手法
- 市場を読み解く第一歩:Segmentation(セグメンテーション)
- 戦略的な選択:Targeting(ターゲティング)
- 顧客の心を掴む:Persona(ペルソナ)設定
- 独自の立ち位置を確立する:Positioning(ポジショニング)
- STPP分析を活用した実践的な戦略立案
- まとめ|窓の開け閉めは「時間と方法」がポイント
STPP分析とは?美容室経営に革命をもたらすマーケティング手法

STPP分析は「自社に最もふさわしく、かつ最も収益の上がるターゲットを市場から見つけ出し、競合に対する自社の立ち位置を明確にするための戦略フレームワーク」です。
この手法は、以下の4つの要素の頭文字から構成されています。
- Segmentation(セグメンテーション):市場を細分化し、様々な顧客層を明確に分類する
- Targeting(ターゲティング):自社の強みを最も活かせる顧客層を戦略的に選定する
- Persona(ペルソナ):ターゲットを具体的な人物像として詳細に設定する
- Positioning(ポジショニング):競合に対する自社の独自の立ち位置を確立する
これらを体系的に分析することで、美容室の現状を客観視し、成長への道筋を明確にできます。では、それぞれの要素を美容室経営にどう活用すべきか、具体的に見ていきましょう。
市場を読み解く第一歩:Segmentation(セグメンテーション)

顧客を知ることから始まる成功への道
セグメンテーションとは、不特定多数の人々を、同じニーズや特性を持つグループに分けることです。美容室経営において、これは「お客様を深く理解する」ための最初のステップとなります。
集客におけるセグメンテーション戦略
効果的な集客を実現するためには、以下の視点で顧客を分類することが重要です。
年齢とライフステージによる分類では、20代のトレンド重視層は最新のカラー技術や流行のスタイルを求める傾向があります。一方、40代の白髪対策ニーズ層は、白髪を自然にカバーしながらも若々しさを保てる技術を重視します。
ライフスタイルによる分類も見逃せません。仕事帰りに立ち寄りたいオフィスワーカーは、駅近で夜遅くまで営業している利便性を求めます。休日にゆっくり過ごしたい主婦層は、落ち着いた雰囲気で長時間の施術を楽しめる環境を好みます。
求めるサービスの内容による分類では、カットとカラーのみを希望する時短志向の顧客、ヘッドスパで癒しを求める顧客、髪質改善に真剣に取り組みたい顧客など、それぞれ異なるニーズを持っています。
求人におけるセグメンテーション戦略
優秀な人材を確保するためには、求職者の特性を理解することが不可欠です。
経験年数による分類では、新卒者は成長機会と教育体制を重視します。アシスタント経験3年以上の中堅層は、スキルアップの機会と適正な評価制度を求めます。スタイリスト経験5年以上のベテラン層は、より高い待遇と裁量権を望みます。
働き方の希望による分類も重要です。フルタイム勤務を希望する人、子育てと両立したい時短勤務希望者、自由度の高い業務委託を求める人など、多様な働き方ニーズが存在します。
戦略的な選択:Targeting(ターゲティング)

自社の強みを最大化する顧客層の選定
ターゲティングは、細分化されたセグメントの中から、自社の強みを最も効果的に活かせる顧客層を選ぶ重要なプロセスです。ここで重要なのは「全ての人に愛される」ことではなく「特定の人に深く愛される」ことです。
集客ターゲティングの実践例
成功する美容室の多くは、明確なターゲティングを行っています。
例えば「都心で働く30代〜40代の女性で、時短で高品質なヘアメンテナンスを求める層」をターゲットにした美容室では、45分以内で完結する高スキルメニューを開発し、平日の夜と土曜日に集中して営業時間を設定しています。
また「子育て中のママで、子供と一緒に通えるアットホームなサロンを探している層」をターゲットにした美容室では、キッズスペースを完備し、子供向けのサービスも充実させています。
求人ターゲティングの成功事例
求人においても、明確なターゲティングが成功の鍵となります。
「トレンド技術を習得し、将来的に独立を考えている20代のスタイリスト」をターゲットにした美容室では、最新技術の研修制度を充実させ、独立時のサポート体制も整備しています。
「家庭との両立を重視し、土日休みの時短勤務を希望する経験豊富なママさん美容師」をターゲットにした美容室では、柔軟な勤務体制と託児サービスを提供しています。
ターゲット選定の6R評価
効果的なターゲティングを行うためには、「6R」の視点で評価することが重要です:
- Realistic Scale(現実的な市場規模):十分な顧客数が見込めるか
- Rate of Growth(成長率):そのセグメントが今後も成長するか
- Rival(競合状況):強力な競合が少ないか
- Reach(到達可能性):そのセグメントにアプローチできるか
- Response(反応度):自社の価値提案に反応してくれるか
- Rank(優先順位):自社にとって最重要セグメントか
顧客の心を掴む:Persona(ペルソナ)設定

「実在する一人の人物」として顧客を理解する
ペルソナとは、ターゲティングで定めた顧客層を、あたかも実在する一人の人物かのように詳細に設定することです。名前、年齢、職業、趣味、価値観、悩みなどを具体的に設定することで、顧客の本音や潜在的な欲求を深く理解し、的確な施策を立てることができます。
集客ペルソナの設定例
顧客ペルソナ:中田里奈さん(32歳)
田中里奈さんは、都内の企業で働く会社員です。3歳の子供を持つワーキングマザーで、現在は時短勤務をしています。最寄り駅から徒歩10分のマンションに夫と子供と3人で暮らしています。
「時短も叶えたいが、オシャレも楽しみたい」最近、SNSで見かける髪質改善が気になりますが、美容室での長時間施術は難しい状況です。子供を預けてゆっくり美容室に行く時間もなく、いつも「早く終わるが品質も妥協したくない」というこだわりを持っています。
里奈さんは、新しい美容室を選ぶ際、必ずGoogleで口コミをチェックします。特に同じような境遇のママたちのレビューを重視し、「子連れOK」「時短メニュー充実」「技術力が高い」といったキーワードで検索しています。
求人ペルソナの設定例
求職者ペルソナ:早川俊輔さん(27歳)
佐藤健太さんは、現在スタイリストとして5年間働いている美容師です。アシスタント時代も含めると、美容業界での経験は7年になります。
現在のサロン環境では、給与がなかなか上がらず、トレンド技術を学ぶ機会も限られています。将来的には独立を考えており、そのためにもトレンドを学べる教育体制が充実していて、高単価の顧客層を多く担当できてしっかり稼げる環境を求めています。
健太さんは、転職を考える際、給与面だけでなく「成長できる環境があるか」「独立時にサポートしてくれるか」「働きやすい人間関係があるか」を重視しています。
独自の立ち位置を確立する:Positioning(ポジショニング)

競合との差別化を図る戦略的ポジショニング
ポジショニングとは、設定したターゲットに対して、自社の提供する製品やサービスが「競合と比べてどんな独自の価値を提供できるか」を明確にすることです。
顧客が購買を決定する際に重視する要素(KBF:Key Buying Factor)を設定し、競合との比較の中で自社の優位性を明確にします。KBFには、価格や機能などの「合理的側面」と、高級感や安心感などの「情緒的側面」があります。
集客におけるポジショニング戦略
合理的側面でのポジショニング例
「〇〇駅直結、20分で完了するハイクオリティクイックカット専門店」として位置づけることで、忙しいビジネスパーソンに対して明確な価値を提供できます。この場合、立地の良さと施術時間の短さ、そして技術力の高さを同時に訴求しています。
情緒的側面でのポジショニング例
「完全個室で、日常を忘れさせる癒しと上質な空間を提供するプライベートサロン」として位置づけることで、プライベートな時間を大切にしたい顧客に対して、特別な体験を提供できます。
競合と比較して「価格は高いが、得られる体験や仕上がりの満足度が格段に高い」といったポジションを確立することで、価格競争に巻き込まれることなく、適正な利益を確保できます。
求人におけるポジショニング戦略
合理的側面でのポジショニング例
「固定給+高歩合で業界トップクラスの給与水準」「月1回外部講師を招いた実践的な技術研修」といった具体的な条件を明示することで、スキルアップと収入アップの両方を求める美容師に対して強い訴求力を持てます。
情緒的側面でのポジショニング例
「スタッフ一人ひとりの個性を尊重し、やりたいスタイルを追求できる自由な社風」「手荒れしないオーガニック薬剤を徹底導入し、美容師の健康を守るサロン」といった価値観やライフスタイルに訴えるポジショニングも効果的です。
STPP分析を活用した実践的な戦略立案

現状分析から始める戦略設計
STPP分析の真の価値は、現状を客観視し、改善すべき点を明確にできることです。多くの美容室が「なんとなく」で営業している中、データと論理に基づいた戦略を立てることで、確実に成果を上げることができます。
段階的な実践アプローチ
まずは、現在の顧客データを分析し、どのようなセグメントの顧客が多いかを把握しましょう。年齢、性別、居住地、来店頻度、利用メニューなどの情報を整理することで、現在の顧客構造が見えてきます。
次に、最も収益性の高いセグメントを特定し、そこをメインターゲットに設定します。その際、6Rの視点で評価することを忘れずに。
ターゲットが決まったら、具体的なペルソナを設定し、その人物の立場に立って、「どのような価値を求めているか」「どのような課題を抱えているか」を深く考えます。
最後に、競合調査を行い、自社の独自の立ち位置を明確にします。価格、サービス内容、立地、雰囲気など、様々な軸で比較し、自社の強みを活かせるポジションを見つけることが重要です。
継続的な改善と最適化
STPP分析は一度行えば終わりではありません。市場環境や顧客ニーズは常に変化しているため、定期的に見直しを行い、戦略を最適化していくことが成功の鍵となります。
月に一度、顧客データを見直し、新しいトレンドや変化を捉えることで、常に時代に適応した戦略を維持できます。
まとめ:STPP分析で描く美容室の未来

STPP分析は、やみくもに施策を打つのではなく「誰に」「何を」「どのように」届けるべきかを明確にするための羅針盤です。この手法を活用することで、限られた資源を最も効果的に活用し、競合他社との差別化を図ることができます。
美容業界は技術力だけでは勝負が決まりません。お客様が本当に求めているものを理解し、それに応える価値を提供できる美容室こそが、長期的に成功を収めることができるのです。
あなたの美容室が今、誰をターゲットにしていて、その人たちが本当に何を求めているのか、そしてあなたの美容室がどんなユニークな立ち位置にあるのか。まずはこれらの点を、STPP分析のフレームワークを使って整理してみてください。
明確な戦略があれば、集客も求人も、そして日々の営業も、すべてが一つの方向に向かって進んでいきます。その結果、お客様により良い価値を提供し、スタッフにはより良い働く環境を提供し、そして経営者であるあなたにはより安定した収益をもたらすことができるでしょう。
STPP分析を通じて、あなたの美容室の新しい可能性を発見し、持続可能な成長を実現してください。成功への第一歩は、現状を正しく把握することから始まります。

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