【完全保存版】美容師のための失業保険マメ知識!
直近のデータによると、美容師の7割以上が転職を経験しています。
退職や転職時にお世話になるのが今回のテーマ『失業保険』
しかし、学校や職場では失業保険について詳しく教えてくれません。
自分が退職するときになって初めて詳しく調べる方も多いのではないでしょうか?
中には、知らなかったため申請せずに100万円近く支給されるはずだった金額を受け取らなかった方もいます。
労務改善が進む美容業界でも、まだまだ不安定とされる美容業界においては、失業保険を含む社会保険についての知識には課題が残されています。
この記事では、美容師が安心して雇用の安定性やキャリアを築いていくためのサポートとなる「失業保険」に焦点を当て、詳しく解説していきます。
- はじめに
- 美容師における失業保険と目的は?
- 自己都合退職した美容師の失業保険は?
- 【美容師も該当】自己都合退職でも失業保険の給付制限期間が短縮
- 会社都合退職の場合、給付制限期間はない
- 美容師が自己都合退職した場合でも、失業保険の給付制限期間がないケース
- 【新型コロナ時代の失業】特定理由離職者とは?
- まとめ
1.はじめに
「雇用保険」と「失業保険」の意味や違いは?
『雇用保険』は労働者の生活や雇用の安定を目的とした、日本の公的保険制度そのものを指します。
その制度によって受けられる給付の一つが『失業保険』で、雇用保険と失業保険はそれぞれの意味に大きな違いはありません。
2.美容師における失業保険と目的は?
失業保険とは、退職後から再就職までのあいだ、精神的に安定した状態で再就職活動を進められるよう、給付や職業紹介を通じて求職者を支援する雇用保険の給付制度のひとつです。
目的は、再就職までの一定期間の生活費補填とされています。
加入者が失業した場合や自己都合により退職した場合などに、失業手当といわれる『基本手当』を受け取れます。
対象者は「雇用保険に加入している被保険者で離職した人」「再就職の意思がある人」両方の要件を満たした人となっていますので、前職で雇用保険に加入していなかった人や、前職がフリーランスだった人などは対象外である可能性が高いです。
雇用保険は「雇用契約期間が31日以上」「週の所定労働時間が20時間以上」などの要件を満たした全ての労働者に加入義務があるため、正社員やパート、アルバイトなどの雇用形態は問いませんが、フリーランスの方は原則加入できません。
雇用保険は被雇用者を保護するための制度であり、自身で事業を行っているフリーランスは対象外として扱われるからです。
失業保険の加入条件
失業保険にある3つの加入条件を解説していきます。
31日以上働く見込みがある
「31日間以上雇用継続しない」などと雇用契約書に明記されている場合以外の正社員やアルバイト、パートなど、雇用形態を問わずにすべての雇用契約が対象です。
- 雇用契約に更新の可能性についての規定があり、31日未満での雇い止めが明示されていない
- 雇用契約に更新規定がない場合でも、31日以上雇用された実績がある
などの場合は、失業保険に加入します。
所定労働時間が1週間に20時間以上
労働時間には「法定労働時間」「所定労働時間」の2種類があります。
- 法定労働時間:労働基準法で、週40時間・1日8時間と定められている
- 所定労働時間:雇用契約上で定められた労働時間
雇用保険では所定労働時間数を条件にしています。
所定労働時間が1週間に20時間以上であれば、雇用保険に加入しなければなりません。
学生ではない※条件有り
学生は原則として失業保険への加入ができません。
ただし、下記すべての要件を満たせば、学生であっても失業保険に加入することが可能です。
なお『学生』には、通信や夜間、定時制も含まれています。
- 卒業見込証明書を有する場合
- 卒業前に就職して卒業後も継続して同一の事業主に勤務することが予定される場合
- 一般労働者と同様の勤務をしていると認められる場合
上記要件の他「31日以上の雇用契約」「所定労働時間が1週間に20時間以上」といった要件も同時に求められます。
美容師としてサロンに勤務しながら、通信などで資格取得を目指している場合は、失業保険へ加入できる場合もありますので、オーナーへ確認してみましょう。
美容師のための失業保険知識【基本手当の計算方法】
失業保険の基本手当を計算する際、下記のような計算方法を使用します。
- 賃金日額=転職前6か月間の給与総額÷180
- 基本手当日額=賃金日額×45~80%
- 基本手当の受給総額=基本手当日額×所定給付日数
- 毎月の基本手当額=基本手当日額×28日分
基本手当日額を計算する際に乗じる割合は、賃金日額・年齢によって異なります。
賃金日額の上限額と下限額
賃金日額には上限額と下限額が設けられており、上限額は離職時の年齢によって、下記の4段階に分けられ、年齢区分ごとで金額が設定されています。
賃金日額の上限額と下限額は「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減によってその額が決定されます。
- 29歳以下
- 30~44歳
- 45~59歳
- 60~64歳
下限額は全年齢が対象で、賃金日額の下限額は2,500円・基本手当日額の下限額は2,000円と定められています。
美容師の支給額シミュレーション
実際に【基本手当の計算方法】を用いて、どのくらいの金額が支給されるのかシミュレーションしてみましょう。
「30歳女性が雇用保険に11年加入した後に会社都合で退職」「賃金日額は1万5,000円」「再就職するまでに転職から1年(365日)」という美容師Aさんを仮定して算出してみましょう。
- 【基本手当日額】賃金日額1万5,000円×50%=7,500円
- 【所定給付日数】270日
- 【給付日数】失業期間365日間ではあるが、所定給付日数により270日
- 【雇用保険の総支給額】基本手当日額7,500円×給付日数270日=202万5,000円
- 【毎月の基本手当額】基本手当日額7,500円×28日=21万
3.自己都合退職した美容師の失業保険は?
美容師が自己都合で退職した場合【退職後7日間の待期期間+給付制限期間】を経て、給付が開始されます。
そのため、自己都合での離職の場合、約2カ月間は失業保険を受け取ることができません。
また、就業期間が1年未満である場合も、失業給付を受け取ることはできません。
自己都合退職の該当条件
労働者自身の都合により会社を退職することが自己都合退職に該当します。
- 転職による退職
- 親族の介護による退職
- 転居によるやむを得ない退職
- 結婚による退職
- 病気で仕事の継続が困難になったことによる退職
また、自己都合・会社都合ともに最低2回の求職活動実績が必要になります。
過去5年間で2回以上、自己都合による退職をしていると、3回目以降は給付制限期間が3カ月間になるため注意が必要です。
4.【美容師も該当】自己都合退職でも失業保険の給付制限期間が短縮
2020年3月に成立した『雇用保険法等の一部を改正する法律』により、自己都合退職者を対象にした失業保険の給付制限期間が短縮になりました。
条件は「2020年10月1日以降に離職した者」「給付制限事由のうち正当な理由がない自己都合により離職した者」
この両方を満たした場合、通常3ヶ月ある給付制限期間が2ヶ月に短縮となります。
ただし「5年間のうち2回まで」という回数制限があり、2020年9月30日以前の自己都合による離職は対象外といった点も注意が必要です。
5.会社都合退職の場合、給付制限期間はない
会社都合退職の場合、給付制限期間はありません。
会社の倒産や事業所の廃止、解雇など会社都合で退職を余儀なくされた場合は、急に収入がなくなる事になるため、労働者が生活に困る可能性が高くなります。
よって会社都合退職の場合は、自己都合退職にあるような給付制限期間は設けられていません。
会社都合による退職の場合は、離職票を提出し7日間の待期期間が経過すれば、給付制限を受けずに失業保険が支給されます。
会社都合退職の該当条件
会社都合退職とは、業績悪化や経営破綻など、会社の都合により会社を退職しなければならない場合が会社都合退職に該当します。
代表的なのは、整理解雇や退職勧奨、希望退職者募集による退職です。
また、下記のような例も会社都合退職となる可能性があります。
- 会社の移転によって通勤できなくなった場合
- 社内いじめ・パワハラ・セクハラ
- 慢性的な残業が改善されない
6.美容師が自己都合退職した場合でも、失業保険の給付制限期間がないケース
自己都合退職でも、給付制限期間のないケースがあります。
- 定年退職
- 妊娠による退職
- 特定理由離職
①定年退職者
定年退職は、あらかじめ就業規則で定年日が定められているため自己都合退職の扱いとなります。
ただし通常の自己都合退職の扱いと異なり、3か月間の給付制限期間はありません。
7日間の待期期間経過後、原則28日間ごとの失業認定日に受給します。
退職日の翌日から1年間の制限がある受給期間は「退職日の翌日から2年間」です。
②妊娠による退職者
妊娠による退職は、自己都合退職の扱いになります。
ただし、妊娠による自己都合退職の場合は、受給期間を延長できます。
受給期間の延長により、受給期間が通常の1年プラス3年間となり、最長で4年に受給期間を延ばせます。
本来であれば給付制限期間が3ヶ月設けられますが、受給期間延長を利用することにより、求職活動を始めて7日間の待期期間経過後に失業給付を受け取ることができます。
③特定理由離職者
特定理由離職者とは、下記のような離職者が該当します。
- 有期労働契約更新を希望したが、認められなかったためやむなく離職した
- 配偶者などと別居生活の継続が困難な状況になり離職した
- 介護などの家庭事情の急変によりやむなく離職した
- 出産、育児により離職し、受給期間の延長措置を受けた
- 人員整理といった希望退職者の募集に応じ離職した
離職に関して自分の意思に反する正当な理由がある場合『特定理由離職者』に認定されるため、7日間の待期期間後に失業給付が支給されます。
特定理由離職者と認められる方法
求職申込の際にハローワークの担当者からの聴取を受けると、特定理由離職者と認められます。
ハローワークの担当者はまず、求職者から退職についての状況や事情についてのヒアリングをし、下記の条件により特定理由離職者に該当するとしています。
そのため、介護による離職といったケースでも、条件に不備があると特定理由離職者と認められない場合があります。
- 正当な理由と認められる事実があるかどうかを確認する
- 当該事実を証明する公的な書類で確認をする
特定理由離職者と特定受給資格者との違い
厚生労働省による特定理由離職者と特定受給資格者の定義の違いは、以下のとおりとされています。
- 特定受給資格者:「倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた者」
- 特定理由離職者:「特定受給資格者以外の者で、期間の定めのある労働契約が更新されなかった事、その他やむを得ない理由により離職した者」
両者ともに給付制限期間はなく、7日間の待期期間の翌日から失業給付が開始されます。
7.【新型コロナ時代の失業】特定理由離職者とは?
新型コロナによる離職も特定理由離職者に該当します。
条件は以下のとおりです。
- 同居の家族が新型コロナウイルス感染症に感染したことなどで看護、介護が必要となりやむなく自己都合離職した
- 本人の職場で感染者が発生し、本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有する、妊娠中であることもしくは高齢である事などを理由に、感染拡大防止、重症化防止の観点から自己都合離職した
- 新型コロナウイルス感染症の影響で一定要件の子の養育が必要となり自己都合離職した
まとめ
美容師としてのキャリアを安心して築くためには、失業保険のような社会保険による国のサポートは欠かせません。
なにより、毎月高額な保険料を納めているので活用しなければ勿体無いですよね?
この記事を通じて、いざという時に活用できるように失業保険についての知識を深め、より安定したキャリアを築いてください。